ふるさとへの「恩返し」 村山市出身村川透監督(81)が挑むハードボイルド映画 山形・村山市
およそ1カ月に渡り村山市で撮影が行われたハードボイルド映画が、先週クランク・アップしました。メガホンを取ったのは、これまで400本以上の映画やテレビドラマを手掛けてきた村山市出身の村川透監督。ふるさとへの恩返しを胸に、かつての仲間と共に臨んだ撮影に密着した。
(村川透監督81歳)
「俺の中では愛するふるさと。何かできることはないかと思って兄の(村川)千秋と相談して「音楽で」「映画で」という形で何かやっていかないと、ただ消えて行ってしまうのは嫌だと思って。ふるさとの為に出来ることはないだろうか」
7年前、東京での生活から山形に戻り、ふるさとへの思いを語ってくれた村山市出身の映画監督・村川透さん。出した答えは自分なりの「恩返し」でした。
(村川監督)「スタート!」
先月10日、昭和の雰囲気漂う村山市内のスナックを貸し切って、ある映画の撮影が
クランク・インした。メガホンをとるのは88歳、今年米寿を迎えた村川監督。作品のタイトルは「LAST DANCE最後の遊戯」。1978年に公開され、大ヒットした松田優作さん主演のハードボイルド映画「遊戯」シリーズ47年ぶりの最新作だ。
「西部警察」や「あぶない刑事」など数々のヒット作を生み出してきたセントラル・アーツ創立45周年記念作品で、村川監督のもと生え抜きのスタッフが再結集。物語の舞台や、ロケ地はすべて村山市。7年越しに実現した村川監督のふるさとへの「恩返し」だ。
(企画プロデュース 柏原寛司さん)
「都会のハードボイルドと地方のハードボイルドの風景がある。都会のアクションとは違う面白さのアクションをやってみたい。村川さんの力でなんとかいい映画にしようと思っている」
(カメラマン 浜田毅さん)
「俺が30代で村川さんが4代0後半ぐらいからずっとやっている。それをもう一回この歳になってやれるのは嬉しい。村川組を貫徹したい」
(脚本家 丸山昇一さん)
「村川透監督はフランス映画の人。乾いているけどどこかでユーモアがあったり、厳しさがあってそれを露骨に出さず洗練されている。それがちゃんとフィルムに出る。だから僕は村川監督のことをラ・フランス監督といっている」
(村川透監督)
「東京から帰って来る時からいつか落ち着いたら村山市で映画を撮って恩返しをしたいという狙いがあった」
今回主演を務めるのは、元刑事を演じる俳優の柄本佑さんと、謎の初老の男を演じる
歌手で俳優の宇崎竜童さん。物語はかつて松田優作さんが演じた伝説の殺し屋、鳴海昌平を捜すため村山市を訪ねた元刑事が、謎の初老の男と出会うことで殺し屋集団との抗争へと展開していくハードボイルド作品だ。
クマ対策のため花火を打ち上げて始まった撮影3日目。この日は、東沢ため池のほとりにあるボートハウスでの撮影。ここは、主演の2人が絡み劇中で何度も登場する
重要な場所としてロケ地に選ばれた。
(村川透監督)
「いいなぁ我がふるさと。子どもの頃、海パン1つで夏は泳いで回ったいい所」
紅葉が水面を彩り美しい風景を見せるため池。しかし、今年の夏は高温と雨不足の影響で、観光客を乗せるボートが出せない事態となった。
(斉藤智哉さん)
「自然の災害なのでどうしようもないというのは我々も...どうしたらいいものか」
今年8月、農業用水にも使われている東沢ため池は、異例の高温と雨の少なさにより、水がほとんど干上がった。このため多くの観光客が訪れる繁忙期を前に、今シーズンの営業を断念せざるを得なかった。
(斉藤智哉さん)
「私たちはボートを提供する側。客の立場で考えると楽しみに来る県外の方もいる。せっかく来てもらっても「乗れない」「残念」と帰られるのは心が痛い」
長年ボートハウスを営んできた斉藤智哉さんも、これまでに経験したことがない水不足。しかし、映画のロケ地となったことで村山市が撮影に全面協力。10月に農業用の排水を一時的に止めることで、例年通りの水の量を回復できた。この日、満足に客を乗せることなく今シーズンの役目を終えたはずのボートが、撮影のため再び運び出された。
(スタッフ)
Q「今の季節に出すのはありえないので、ドキドキ楽しみ。今からでも営業したいくらいの水の量でスワンさんもまさかと思っていると思う。」
この映画をきっかけに、またボートハウスに賑わいが戻ってほしい。それがスタッフ全員の願い。
(斉藤智哉さん)
「村川監督のボートハウスへの熱い思いも伝わってすごくありがたく思う。この映画を多くの人に観てもらって村山市はこんなに素敵なところだということを皆さんに伝わればいい。私もすごく楽しみにしている」
村山市楯岡にある村川監督の私設ホール・「アウトザールM」。撮影5日目となったこの日、ロケ弁当生活が続く撮影スタッフに、山形名物の「芋煮」がふるまわれた。
(撮影スタッフ)
「めちゃくちゃうまい。お肉がやっぱりおいしい。温かい汁物は最高です」
(撮影スタッフ)
「地元の方の郷土愛に助けられていい作品が作れるように頑張ります」
芋煮はスタッフに大好評。ふるまったのは「アクトザールM」のボランティアスタッフたち。昼夜問わず撮影に没頭する映画スタッフに、せめて手作りの温かい料理で疲れを癒してもらいたいという思いからだ。
(アクトザールM 運営スタッフ 齊藤浩志さん)
「Q・芋煮好評ですね」
「やっぱり山形の味だから、みんなで作った甲斐がある。いっぱいおかわりして食べてもらえればありがたい」
地元の人たちが文化や芸術に触れられる場にしようと建てられた「アクトザールM」。この場所も監督なりの「恩返し」。ホールは、自治体の施設と違い、使用目的や居住地に縛りは無く、誰でも半日2000円ほどで利用できる。
この日は、いきいきとした表情で歌声を響かせる「うたごえ喫茶」。月に一度開かれていて、東京や新潟など県外から訪れる人もいる人気のイベントだ。
(参加者)
「とても楽しかった。みんなと会えること、声を出して歌うことは非常に良い」
(参加者)
「思い切り歌えるから前より声が出るようになった」
(アクトザールスタッフ 安達きわさん)
「みんなで楽しみましょう。どなたでも来てください。チェロの公演、12月にハワイアンコンサート、クリスマスパーティー行く場所があることは次の夢に向かって進めるのでいいこと」
人と人が集う、楽しい時間。村川監督の作った恩返しの場所は、地域の人たちにとって心のよりどころとなっている。
朝からうっすらと雪が積もり、秋の終わりが近づいた撮影9日目。村山市民会館で行われたのは、殺し屋集団と激しい銃撃戦を繰り広げるクライマックスに続く重要なシーン。市民の憩いの場所に、ふだんとは違った緊張感が漂う。
(村川透監督)
「みんなと一緒に集まって物を作るというのは、こんなにも素晴らしいものだと同時に、やればやるほど映画を作りたくなるのは映画からのプレゼントじゃないかな。私が生きている間は何としてでも志と魂を持って私の心であるふるさとに恩返しをやり続けますこれからも」
映画にかける情熱とふるさとへの思いは、これからも尽きることはない。
(村川透監督81歳)
「俺の中では愛するふるさと。何かできることはないかと思って兄の(村川)千秋と相談して「音楽で」「映画で」という形で何かやっていかないと、ただ消えて行ってしまうのは嫌だと思って。ふるさとの為に出来ることはないだろうか」
7年前、東京での生活から山形に戻り、ふるさとへの思いを語ってくれた村山市出身の映画監督・村川透さん。出した答えは自分なりの「恩返し」でした。
(村川監督)「スタート!」
先月10日、昭和の雰囲気漂う村山市内のスナックを貸し切って、ある映画の撮影が
クランク・インした。メガホンをとるのは88歳、今年米寿を迎えた村川監督。作品のタイトルは「LAST DANCE最後の遊戯」。1978年に公開され、大ヒットした松田優作さん主演のハードボイルド映画「遊戯」シリーズ47年ぶりの最新作だ。
「西部警察」や「あぶない刑事」など数々のヒット作を生み出してきたセントラル・アーツ創立45周年記念作品で、村川監督のもと生え抜きのスタッフが再結集。物語の舞台や、ロケ地はすべて村山市。7年越しに実現した村川監督のふるさとへの「恩返し」だ。
(企画プロデュース 柏原寛司さん)
「都会のハードボイルドと地方のハードボイルドの風景がある。都会のアクションとは違う面白さのアクションをやってみたい。村川さんの力でなんとかいい映画にしようと思っている」
(カメラマン 浜田毅さん)
「俺が30代で村川さんが4代0後半ぐらいからずっとやっている。それをもう一回この歳になってやれるのは嬉しい。村川組を貫徹したい」
(脚本家 丸山昇一さん)
「村川透監督はフランス映画の人。乾いているけどどこかでユーモアがあったり、厳しさがあってそれを露骨に出さず洗練されている。それがちゃんとフィルムに出る。だから僕は村川監督のことをラ・フランス監督といっている」
(村川透監督)
「東京から帰って来る時からいつか落ち着いたら村山市で映画を撮って恩返しをしたいという狙いがあった」
今回主演を務めるのは、元刑事を演じる俳優の柄本佑さんと、謎の初老の男を演じる
歌手で俳優の宇崎竜童さん。物語はかつて松田優作さんが演じた伝説の殺し屋、鳴海昌平を捜すため村山市を訪ねた元刑事が、謎の初老の男と出会うことで殺し屋集団との抗争へと展開していくハードボイルド作品だ。
クマ対策のため花火を打ち上げて始まった撮影3日目。この日は、東沢ため池のほとりにあるボートハウスでの撮影。ここは、主演の2人が絡み劇中で何度も登場する
重要な場所としてロケ地に選ばれた。
(村川透監督)
「いいなぁ我がふるさと。子どもの頃、海パン1つで夏は泳いで回ったいい所」
紅葉が水面を彩り美しい風景を見せるため池。しかし、今年の夏は高温と雨不足の影響で、観光客を乗せるボートが出せない事態となった。
(斉藤智哉さん)
「自然の災害なのでどうしようもないというのは我々も...どうしたらいいものか」
今年8月、農業用水にも使われている東沢ため池は、異例の高温と雨の少なさにより、水がほとんど干上がった。このため多くの観光客が訪れる繁忙期を前に、今シーズンの営業を断念せざるを得なかった。
(斉藤智哉さん)
「私たちはボートを提供する側。客の立場で考えると楽しみに来る県外の方もいる。せっかく来てもらっても「乗れない」「残念」と帰られるのは心が痛い」
長年ボートハウスを営んできた斉藤智哉さんも、これまでに経験したことがない水不足。しかし、映画のロケ地となったことで村山市が撮影に全面協力。10月に農業用の排水を一時的に止めることで、例年通りの水の量を回復できた。この日、満足に客を乗せることなく今シーズンの役目を終えたはずのボートが、撮影のため再び運び出された。
(スタッフ)
Q「今の季節に出すのはありえないので、ドキドキ楽しみ。今からでも営業したいくらいの水の量でスワンさんもまさかと思っていると思う。」
この映画をきっかけに、またボートハウスに賑わいが戻ってほしい。それがスタッフ全員の願い。
(斉藤智哉さん)
「村川監督のボートハウスへの熱い思いも伝わってすごくありがたく思う。この映画を多くの人に観てもらって村山市はこんなに素敵なところだということを皆さんに伝わればいい。私もすごく楽しみにしている」
村山市楯岡にある村川監督の私設ホール・「アウトザールM」。撮影5日目となったこの日、ロケ弁当生活が続く撮影スタッフに、山形名物の「芋煮」がふるまわれた。
(撮影スタッフ)
「めちゃくちゃうまい。お肉がやっぱりおいしい。温かい汁物は最高です」
(撮影スタッフ)
「地元の方の郷土愛に助けられていい作品が作れるように頑張ります」
芋煮はスタッフに大好評。ふるまったのは「アクトザールM」のボランティアスタッフたち。昼夜問わず撮影に没頭する映画スタッフに、せめて手作りの温かい料理で疲れを癒してもらいたいという思いからだ。
(アクトザールM 運営スタッフ 齊藤浩志さん)
「Q・芋煮好評ですね」
「やっぱり山形の味だから、みんなで作った甲斐がある。いっぱいおかわりして食べてもらえればありがたい」
地元の人たちが文化や芸術に触れられる場にしようと建てられた「アクトザールM」。この場所も監督なりの「恩返し」。ホールは、自治体の施設と違い、使用目的や居住地に縛りは無く、誰でも半日2000円ほどで利用できる。
この日は、いきいきとした表情で歌声を響かせる「うたごえ喫茶」。月に一度開かれていて、東京や新潟など県外から訪れる人もいる人気のイベントだ。
(参加者)
「とても楽しかった。みんなと会えること、声を出して歌うことは非常に良い」
(参加者)
「思い切り歌えるから前より声が出るようになった」
(アクトザールスタッフ 安達きわさん)
「みんなで楽しみましょう。どなたでも来てください。チェロの公演、12月にハワイアンコンサート、クリスマスパーティー行く場所があることは次の夢に向かって進めるのでいいこと」
人と人が集う、楽しい時間。村川監督の作った恩返しの場所は、地域の人たちにとって心のよりどころとなっている。
朝からうっすらと雪が積もり、秋の終わりが近づいた撮影9日目。村山市民会館で行われたのは、殺し屋集団と激しい銃撃戦を繰り広げるクライマックスに続く重要なシーン。市民の憩いの場所に、ふだんとは違った緊張感が漂う。
(村川透監督)
「みんなと一緒に集まって物を作るというのは、こんなにも素晴らしいものだと同時に、やればやるほど映画を作りたくなるのは映画からのプレゼントじゃないかな。私が生きている間は何としてでも志と魂を持って私の心であるふるさとに恩返しをやり続けますこれからも」
映画にかける情熱とふるさとへの思いは、これからも尽きることはない。