
11月20日、第2回さくらんぼ文学新人賞贈賞式が、さくらんぼテレビ社屋で行われました。
選考委員で文芸評論家の北上次郎氏、作家の小池昌代氏をはじめ、同賞共催の新潮社の編集者、山形市教育長の後藤恒裕氏や山形大学名誉教授の金山等氏、県出身で南陽市在住の作家、深町秋生氏、そしてメディア関係者など、大勢の人で会場はにぎわいました。
主催社を代表して、さくらんぼテレビ代表取締役社長阿部和夫の挨拶があり、その後、来賓の祝辞や選考委員の方々から励ましのお言葉、そして、今年の大賞受賞者、邢彦さんの喜びの言葉がありました。
■ 後藤恒裕氏(山形市教育長)
「邢彦さん、大賞受賞おめでとうございます。さくらんぼ文学新人賞は、女性の作家による日本語文学の新たな可能性を切り開く文学賞として企画され、今年で二回目を迎えました。山形の地から、新たな才能を発掘し、全国、そして世界に発信していく文学賞が生まれたことは、大変すばらしいことであり、また、山形市の、そして山形県の文化の発展に大きく寄与するものであります。さくらんぼ文学新人賞のますますの発展を祈念申しあげます」
■ 小池昌代氏(作家・詩人)
「今回は、一段落目あたりを読んだだけで邢彦さんに決めました。邢彦さんは来日されて十年目ということですが、日本語がとても新鮮でした。ほこりのつかない日本語とでもいうのでしょうか。この先も、この日本語、この文章を読んでいきたいと感じました。
また、邢彦さんはリアルな話が書ける人であると同時に、幻想というものも書ける人ではないかと思っています。今後、邢彦さんがどんどん書いてくださることを、とても楽しみにしています」
■ 北上次郎氏(文芸評論家)
「新人賞というのは世の中の才能を発掘するためにあるのですが、その新人賞を大きくするのは、そこからどのような新人が出るかにかかっています。昨年に続き、邢彦さんというすばらしい才能が生まれたことを嬉しく思っています。
ただ、賞の受賞がゴールではありません。いまの時代、新人賞を受賞してデビューしても、昔と違って広がっていくには時間がかかります。それを覚悟して、あせらず、着実に自分のペースで書いていくほうがいいように思います。小説はすぐに結論が出るものではありません。まわりも長い目で見ていただきたいと思います」
■ 大賞受賞者・邢彦氏
「昨年日本に帰化しました。今年の10月で来日10年目になります。この節目の年に、このような立派な賞をいただき、本当に嬉しく思っております。自分の作品を拾いあげてくださったご恩返しとして、これから一層努力し、いい作品を書き続けていきたいと思っています。本日は本当にありがとうございました」
新潮社の佐藤誠一郎氏の乾杯の音頭のあと、和やかに歓談がはじまり、さまざまな声が文学賞によせられました。その一部を紹介します。
■ 佐藤誠一郎氏(新潮社)/乾杯の挨拶より
「最近のことでいえば、中国出身の楊逸(ヤン・イー)さんが芥川賞を受賞したり、すばる文学賞を台湾出身の方が受賞していますが、邢彦さんの日本語表現力には仰天しました。すばらしかったです。邢彦さんは長編がお書きになれる方だと思います。我々はしっかり邢彦さんを支えていきますので、いい作品を書いて大きく羽ばたいていただきたいと思います」■ 金山等氏コメント(山形大学名誉教授)/会場にて
「最近、山形出身の作家が多くなりました。昔からは考えられないことです。その理由のひとつとしては、文芸評論家の池上さんの存在も大きいと思います。ひっぱっていく人がいないと、せっかく才能がある人も埋もれてしまいますからね。そのような意味で、さくらんぼ文学新人賞も、山形の文学を発展させる大きな存在になると思います。受賞者の方が活躍してくれることが、大切だと思います。邢彦さんの今後の活躍を期待しています」■ 高澤恒夫氏コメント(新潮社)/会場にて
「今回は昨年度より、作品のバラエティが少なかったように思います。ただ、作品の全体的なレベルは今年のほうが高かったです。
今回の邢彦さんの作品は、文章の美しさも高く評価しましたが、ひとつの場面で光るものがあったことにも魅力を感じました。あと、物語を進めようとする力、主人公の変化を確実にとらえて、物語に定着させるという姿勢がはっきり見えたこともあります。ひとつの成長小説ではあるのですが、心情を描くだけでなく、主人公の変貌が物語を動かしていくという姿勢に好感を持ちました。今後の活躍を楽しみにしています」
■ 長谷川麻由氏コメント(新潮社・昨年大賞受賞者担当編集者)/会場にて
「昨年度の大賞受賞者の長谷川多紀さんからは、作品は定期的にお送りいただいております。作品を出していただいて、長谷川さんと編集側でやりとりをし、直しを入れていただいておりますが、いずれ、昨年の受賞作を含めてまとめていきたいと思っています。
邢彦さんの作品は、とても日本語が精練されているというか、あえてフラットにした文章がとてもよかったと思います。あと、自分の不幸を誰かのせいにせず、悲しみ、悔しさはあるけれども、それを自分で受け入れる潔さがあったように思います。そこも好感が持てました。
今回の受賞作品は、もっと書き込んで長編にもっていくのもありではないかと思っています。そして、今回の作品の前か後に続くもう一作を書いていただいて、一冊にまとめるということも考えられると思います。これからの活躍を期待しています」
■ 植村昌則氏コメント(共同通信山形支局長)/会場にて
「いま、女性だけの文学賞は、全国でさくらんぼ文学新人賞しかないと思います。今回、受賞された邢彦さんは中国から帰化された方ですが、国籍がどこであれ、うごめいている感情や人間性など、本来もっているものは関係ないと思います。
今回の大賞受賞作品に関しては、その、どろどろした感情が、闘いながらひとつのものに出来上がっていく、という感想を持ちました。そして、大阪という舞台も大きなキーワードになっていると思いました。作者も大阪在住ですが、大阪の街を上手に描いていると感じました。素直に描きたいことを描いていて、胸にすとんと落ちる作品だと思います。今後の活躍を楽しみにしています」■ 深町秋生氏コメント(作家)/会場にて
「今回、はじめて下読みをさせていただきましたが、女性文学賞ということで、男が書かない分野、例えば難病・嫁姑問題・老いの問題・年下のボーイフレンドとの関係などが題材として選ばれ、面白く感じました。ただ、結果的に、わりと類型的な作品が多かったように思いました。小説なので、安穏たる生活では物語にならないわけですが、しかしある種、類型的な話を選んでも、そこになにか作者独自の光るものがあれば類型を脱します。
今回、等身大の身近なテーマの作品が多かったなかで、勝負をわけたのはディティールではないかなと思います。いかに自分を見つめているのかというところが、上にあがるか落ちるかの分かれ目だったのではないか。類型のままでは、新人賞をとるのはむずかしいと思います。邢彦さんの今後の作品を楽しみにしています」
■ 池上冬樹氏コメント(文芸評論家・文学賞運営委員)/中締め挨拶より
「邢彦さんに日本に帰化した理由を尋ねたら『日本がこんなにいい国だったと思わなかった。こんなに温かい人がいることも知らなかった。それを小説で伝えたかったんです』という言葉が返ってきました。そういう思いは、表に出して発信していかなければわからないものなんですね。
邢彦さんの座右の銘は「継続は力なり」ということですが、本当にそうだと思います。さくらんぼ文学新人賞も今年で二回目ですが、作家も文学賞もすぐに結果はでません。地道にやっていくしかないんです。今年の投稿作品は554本。男女の応募者あわせて300本もいけばよく集まったといわれるのに、女性だけの応募者で500本を超えている。これはとても大きな数字です。それだけ、この文学賞が注目されているということです。これからもみなさんのお力をいただきながら、新しい才能の発掘に力をいれていきたいと思います。これからもよろしくお願いします」
今回、554本の応募作品がよせられた「さくらんぼ文学新人賞」は、来年以降も継続します。
第3回の募集に関する詳細は、さくらんぼテレビのホームページにて発表されますのでいましばらくお待ちください。
第3回も、みなさまの作品をお待ちしています。